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曖昧な箱庭
彼女の名は、不知火あかね。
不知火写真館に残された一人娘である。
(以下の記載は、"いま"を生きるモノクロの青年でさえも知り得ない)
親族の少なかった彼女は、街への遠出で患った結核によっての死後、
愛弟子である善司の手で葬られた。
しかし、愛したカメラに魂を取られたのか、
そこには同じ顔をした少女がいた。
その瞳は固く閉ざされ、寂し気な表情を浮かべている。
百年以上もの時を、この館にひとり住み続ける怪異は、果たして彼女自身なのか。
いまとなっては誰にもわからない。
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